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ハーディング氷原ハイク日記 9月某日

 

アンカレッジから南に車で約2時間ほどにあるキーナイ・フィヨルド国立公園内にあるEXIT氷河を真横に見ながら山を登って、氷河の源でもある氷原まで辿り着けるトレールがあるというので、それでは雪も降らないうちに行ってみようかと、9月も後半にさしかかった某日、仲間数人と向かった。天気も多少の雲もあるが、お日様も出て、アラスカのこの時期としてはハイク日和と、いざ公園へと向かうが、時刻は早くも午後1時を周っている。ハイクコースは氷原ま で行って帰ってくるまで7マイルとちょっと(約12キロ)ということで、通常このハイクにかかる時間は7時間とされているようで、今の時期、日没が8時と考えると、少し遅すぎないかと一人心配していたのだが、連れの仲間達が若い(二十歳そこそこ)ということで、まあなんとかなるかとトレールに立つ(写真1)

コースはEXIT氷河の右横の山斜面に作られており、これをひたすら山頂部に広がる氷河を見渡せるポイントまでひたすら登っていくものである。駐車場のあたりは、道も舗装されており、起伏もほとんどないが、いざトレールサインを過ぎるとそのまま鬱蒼とした木や潅木の中に入り、トレールも岩やら木の根っこが剥き出しになって、勾配もいきなり険しくなる。歩いて5分で汗が出てくる。食料や水を充分持ってきて良かったと思う。手をついて登らなくてはならない箇所もあるが、ところどころ左に氷河を見ながらのハイクで、氷河特有の青さ(グレーシャーブルー)とクレバスを見るたびに、改めて氷の大きさに驚き、神が作り上げたのではないかと思うほどの大自然の彫刻に感動。疲れも吹っ飛ぶ。かなり早や歩きではなかったかと思うが、黙々と歩きながら45分もすると、左前方に氷原らしきものが徐所に見え始めてきた(写真2)。すごいの一言。思わず立ち尽くしてしまう。鬱蒼とした木々を抜けると、道の勾配も徐々にだが緩くなる。1時間位たったのだろうか。このあたり、木が徐々になくなり始める。森林限界線のあたりだと思う。周りはヤナギやクローベリー(ガンコウラン)、ブルーベリーなど、地面低く生える植生が見られるようになってきた。雪もところどころ見え始めている。2−3日前に降った新雪だろうと思うが、道もそのせいかぬかるんで靴底にチョコレートのようにべったりくっついてしまっている。ふと、前方の山頂にある白い斑点が目に入る。あれ、雪かな?と思って、目を凝らしてよくよく見るとわずかに動いている。マウンテンゴートらしい。双眼鏡で確認すると、群れで5−7頭くらいいるだろうか。「雪じゃないですか?」「動きませんよ」「分からん」などと言って来るD君やMさんに対して、「よく見てみい!」と半ば強引に双眼鏡を握らせ覗かせる。「あー、動いている!」やっと分かってくれたか、二十歳の若者よ。ドールシープじゃないの?って言われたら、何て答えたらいいか分からなかったが、とりあえず自分が最初に見つけたという誇らしさ?でうれしさいっぱい、さらにトレールを進む。前々から、トレール途中でマーモットがたくさんいるという情報を得ていたので、周りに目をやりながら歩いていく。マーモットはアラスカで見られる動物の中ではかなりお気に入りなので、なんとかご対面できればと考えていると、今度は山から崩れてきたのであろう、一面、石が積み重なった瓦礫エリアに入る。ここでは足で踏みつけられたトレールが非常に見づらい。我々も一瞬迷って、戻ってくるハイカーに注意されたほどだ。トレールも大事だが、今の自分にとっては頭がマーモット(写真3)でいっぱいだった。他の連中を尻目に、「マーモットは?マーモットはどこだ?」とあたりをキョロキョロする。確かにこんな崩れた石積みに巣らしき穴があちらこちら点在する。トレールを進むに連れて、徐々に地面に残る雪が多くなってきた。深いところではひざくらいまであるようだが、まだまだ今はハイクのシーズンということで、ハイカー達につけられた足跡をたどるようにして、我々も足を進めた。途中、氷河や雪から溶け出したであろうクリークを渡りながらさらに歩く。退屈しのぎに、雪玉をつくりMさんに投げつけながら歩いていくと、標高的には氷原の端っこくらいまで来たのだろうか。トレールも平坦になっている。トレールの終点はまもなくではないかと思わせる。左には、はるか奥に広がっているであろう氷原が太陽の光に照らされながら我々の前に姿を見せてくれている(写真4)。Mさんはキャーキャーいいながら、トレールを外れ氷原がもっとよく見える方へ走っていく。この辺は、もう植生もなく、ひたすらねずみ色をした瓦礫と岩、そして白い新雪があるだけだ。もう、このあたりで時刻は4時半にさしかかっている。5時には引き返さないと、と思いつつまだ続くトレールの先に思いを馳せて歩く。戻ってくるハイカーは、一様に「見渡す限りの氷原が広がっているから」と言うではないか。帰りが何時になろうが、これはもう行くしかないだろう。最後の一踏ん張りとも言える少し小高い丘をひたすらまた登る。右に避難小屋らしきものがあるが、それを通り過ぎると・・・。はあ、また小さな丘がある。他の仲間達はまだまだ後ろだ。Mさんが「もう、5時になるよー」と叫んでいるが、そんなことはどうでもいいと、とにかく進んでこれで最後とも思える丘を歩ききると・・・。おー、おー!前方には大氷原が広がるではないか。(写真5)遥か彼方奥にずーっと。一体どこまで続いているんだろうか。前方に出ている太陽の光が氷一面を照らしまぶしい。一定の規則で作られたような氷の割れ目クレバスが縦に幾何学模様を描き出している。あまりの大きさに、スケール感覚を失うほどだ。周りには誰もいない。ただただ、氷の平原が後ろに広がるだけで、あとは我々のはしゃぐ声が聞こえるだけである。はしゃぎ疲れて皆静まり返る。ふと氷原を振り返る。太陽の光が氷に反射してまぶしい。ただ考えつくのは「一体どこまで続いているのだろう」自分自身のちっぽけな存在と、この果てしない氷原が形作られるのにかかったであろうとてつもない時間の長さに気づかされる瞬間だった。

「どのくらい大きいんだろう?」「帰りは、あの氷の上をそりで乗って下りて帰れば早いよな」。冗談交じりに帰路を急いだ。                                                                                                                   (9月某日 ヤザケン)

 

 

バックナンバー

 

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第2回  雲のように柔らかいキヴィユートの魅力

第3回  凍った湖に穴を開けて、、、、アイスフィッシングが面白い!

第4回  凍った川を渡って近道!!アイスブリッジのこと

第5回  春だ!5月だ!フーリガンだ!

第6回    日照時間の話

第8回   オーロラを見ながら、ふと思った「たあいの無い」こと

第9回  ヤザケン日記−熊に遭遇

第10回 アラスカの風物詩(?) ムース(ヘラジカ)

第11回 アラスカの野花ーヤナギラン

第12回 これであなたもアラスカン !!

第13回 ブッシュライフのいざない

第14回 北極圏へのいざない

第15回 ネナナ・アイスクラシック

第16回 サーモンフィッシングのすすめ その@ 

第17回 サーモンフィッシングのすすめ  そのA

第18回 バードウォッチングのすすめ

 

 

 

 

 

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