ヤザケン日記 − 熊と遭遇
総勢20名ほどのハイカーとハイキングに出かけたある日の事。森林限界を超えて、ある登りの曲がり角を回りきったところで何か動くものが目に入った。「あれ?」と思って立ち止まっているうちに、後ろに続いてきたハイカーが一言。「あ、クマよ!」
よく見れば、ブラックベアのカブ(こぐま)が2頭。そのうちの1頭がこちらを見て、驚いている − というか、恐れおののいていると言ったほうがよいだろうか。一目散にブッシュの中に逃げ始めた。最初は何か判別がつかなかったのだが、その隣に見えたのがどっしりとした黒い大きなかたまりが動いている。母グマのお尻らしい。母親もこちらに気づき、目と目が合う。その瞬間、後ろに続くハイカーの事を思い出した。「あぶないので、静かにゆっくりと下がってください」と小声で言う中、母親も最初に逃げ出したカブと共に、ゆっくりブッシュの中へ消えていった。
この間、わずかに3分ほどであったろうか。クマと共に流れた時間は、今となっては言葉には表せない、何か特別なものを感じる。一体、何なのであろうか。
正直言うと、あのカブの顔を見た時、「あ、かわいい」というのが最初の感想であった。ただ、今思い起こすと、あのカブは我々人間をどのような気持ちで見ていたのだろうかと思う。あの怖がり方を見ると、もしかしたら今まで生きてきた中で初めて見る「異色の」存在だったのかも知れない。
時間と空間を共有していたにも関わらず、お互いに思いは異なっている。当たり前なのだろうが、クマが住む世界とは我々が住む世界とは全く別のところにあるのかな、と少々さみしく感じた一時でもあった。我々とは決して交わることのできない世界 − それが野生というところなのであろう。
(9月某日 ヤザケン)

マッキンレー山展望ハイキング マッキンレー山の前でギターを弾く 熊と遭遇したハイキング
ヤザケン(彼の夢であった) コースを歩く人々